【おつまみ物語vol.9】ITベンチャー役員の肩書を捨てて臨む、身体にも心にも優しい農業(奈良おおの農園さんの「玄米きなこクッキー」)

おつまみ ヘルシーおやつパッケージ

おつまみパッケージに入っているこだわりのおつまみをご紹介するこの企画。今回は、ヘルシーおやつパッケージに入れさせていただいている「玄米きなこクッキー」をご紹介します。

奈良おおの農園の大野さんに、インタビューさせていただきました。

奈良おおの農園とは?

奈良県奈良市の富雄地区で300年以上続く農家。天然の地下水で栽培する米のほか、農薬不使用の野菜を20品目以上栽培。環境への配慮と安全性を大切にした農産物づくりに取り組む他、クッキーや野菜チップスなど、自身で栽培した農産物の加工、販売までを一気通貫で実施している。

「玄米きなこクッキー」とは?

「小麦粉・卵・乳製品・白砂糖を使わない」原材料で作った、7大アレルゲン不使用の体に優しいクッキー。アレルギーに悩むお子さんがみんなで集まる場で、「この子だけ別々のおやつ」にさせず「みんなで同じものを食べられる」ことがコンセプトとなっている。

子どもの頃から肌で感じていた「農業」で食べていくことの難しさ

上述の通り、奈良おおの農園さんは300年以上の歴史をもつ農家さん。

私(スタッフの並木)は、「それだけ続いている家業を継ぐ、というプレッシャーは相当なものだったのだろう」と思い、「大野さんは、歴史ある農家を継がれたのですね」と切り出し、インタビューをスタートしました。

しかし、大野さんから返ってきたのは、「そんな、期待されるような話じゃないですよ」という言葉。大野さんが話してくださったのは、「300年の歴史」という美しい言葉だけでは語りきれない、複雑な思いでした。

大野さんは幼少の頃から、周囲に「君は農家の後継ぎだな」と言われて育ちました。

しかし、一方で農業だけで食べていくことの厳しさを肌で感じており、高校生の時にお父様が農業で稼いでいる具体的な金額を知り、それは確信に変わりました。

「これじゃ結婚できないと思ったんです。とてもじゃないけど、家族を養っていけない」

実際、お父様は兼業農家として、別の仕事を掛け持ちしていました。
「歴史があっても農業単体で食べていくのってこんなに難しいのか」と、子ども心に悟ったと言います。

そうして大野さんは農業とは距離を置き、大阪や東京のIT企業の仕事に就くことになりました。

激務によって生じた身体の異変

ITの仕事にはやりがいを感じていたものの、とにかく忙しい毎日を送っていたそうです。

夜中の2時に帰宅し、3時にコンビニの焼肉弁当を食べて、3時半に寝る。5時半に起きてまた出社。さらには休日出勤も当たり前の、まさに激務の日々でした。

そんな生活が続いたある日、身体中のかゆみとともに皮膚が真っ赤になり、涼しいところにいないと我慢ができない状態になってしまいました。

バランスの悪い食事、睡眠不足、ストレス・・・これらがきっかけとなり、アレルギーを発症してしまったそうです。

しかし激務であることは変わらず、アレルギーにも悩まされる中、大野さんは結婚し、お子さんが生まれます。

そのお子さんに卵アレルギーがあったことが、その後の大野さんの生き方を大きく変えるきっかけとなりました。

高級デパートでも手に入らない「卵なしのおやつ」

今でこそ、「アレルギー品目除去」の食べ物やおやつはネットで探せばすぐに見つかりますが、15年前の当時は情報もなく、お店に置いてあることも稀でした。

近所のスーパーはもちろん、ちょっといいお店に行っても見つからない。大野さんはお子さんのために「卵の入っていないおやつ」を求め、町中を彷徨うことになります。

とうとう都内の高級デパートに行くものの、そこでも「卵の入っていない、子どもが喜ぶおやつ」を見つけることはできませんでした。

「こんなになんでも手に入る都会にいて、豊かな生活をしているのに、卵が入っていないおやつを探すだけでこんなに大変だなんて」

大野さんは愕然としたと言います。

仕事は順調だし充実している。でも、このままで良いのか。

言語化されていないけれど心に常に引っかかる、「なんとなくのモヤモヤ」を抱えるようになったそうです。

ご自宅と田んぼの前でインタビューに答えてくださった大野さんと、弊社スタッフ。※弊社スタッフは、写真撮影時のみマスクを外しています。

東日本大震災をきっかけにUターンを決意

そのモヤモヤが確信に変わったのが、東日本大震災でした。

大野さんの友人は、被災地にガスの復旧の仕事に行ったり、橋をつくる会社に勤めていた友人は被災地で崩落した橋を修理する仕事をするなど、自らできることで被災された人たちをサポートしていました。

そんな姿を見ながら大野さんは、

「自分は一体何をやっているんだろう」

「今の自分の仕事は、本当に子どもに誇れるものなのか」

と自問自答したそうです。

そして、大野さんが住む東京でも、スーパーから食べ物が消え、水が消えました。毎月契約していたウォーターサーバーも届かなくなったそうです。

東京は、今までなんでも揃っていると思っていたけれど、本当にそうなのか。

都会で裕福な生活をしていられるのは、食べるものを作っている人、それを運ぶ人がいるからなんだ。

 今まで距離を置いていた「食」への関心が少しずつ湧いてきて、日々自分たちの食を支えてくれている人たちがいることを実感し、その人たちに感謝するようになったそうです。

そして、大野さんはIT企業の役員というキャリアを捨て、家族を連れて奈良の実家に帰りました。

半農半ITで、「自分の農業」の基盤を作る

実家に戻った大野さんは、IT企業に勤めていたキャリアを生かし、昼間は農業、夜に子どもが寝た後にITの仕事を請け負いながら、「半農半IT」の生活を7年間続けます。

大野さんは、この7年間で「自分の農業」の基盤を作りました。

もともと実家の手伝いをしていた程度で、農業に関してほぼ素人だったという大野さんは、マイファームという農業ベンチャー企業がはじめた農業学校に参加しながら、土づくりや法規制などを一から学び、栽培技術を習得していきます。

日々農業について学ぶうちに、東京にいる頃に抱いていた「もっと新しいことをしたい!」という思いが「受け継がれてきた土地を生かしたい。ここから新たにスタートしたい」という気持ちに変わっていきました。

そこから、農作物の栽培だけでなく、加工にも取り組むようになり、小さく6次産業をスタートします。

そんな時、お客様から「小麦アレルギーの人でも食べられる、グルテンフリーのクッキーを作って欲しい」という声をもらうようになりました。

その声に応えるべく、一からお菓子づくりを学び、幾度もの試行錯誤の末に完成させたのが、7大アレルギー物資を含まない「玄米きなこクッキー」です。

玄米きなこクッキーのパッケージ。鹿の親子がぐっすり眠る、可愛らしいデザインが目を引く。

発売後のこと。ある日突然アナフィラキシーショックを起こし、病院に運ばれたお客様から、

「突然小麦粉が食べられなくなって15年、もう二度と小麦粉やクッキーは食べられないんだと思っていました。でも、大野さんのクッキーを見つけ、涙が出そうなほど嬉しくて。懐かしい味がしました」

というお便りが届いたそうです。

この時大野さんは、「やっててよかったな」と心から感じました。

今後もグルテンフリーの商品に力を入れていくそうですが、「グルテンフリーであること」自体を強く推したいというわけではないそうです。

「グルテンフリーだから、アレルギーの人が食べられる」ものを作るというよりも、「美味しいと思って食べていたら、たまたまグルテンフリーだった」、そんなものを作りたいとのこと。

「自分だけ食べられない」という疎外感を感じることなく、そこにいる人みんなが楽しく、同じものを食べることができる場を作りたい、という強い想いを感じました。

「頑張りすぎなくていい」というメッセージ

今大野さんが力を入れているのは「しんどくならないおやつ」だそうです。

「"しんどくならない"とは?」と大野さんに聞くと、「罪悪感がないこと」という答えが返ってきました。

例えば、子育て中の方ならきっと心当たりのある、こんなシーンを想像してみてください。

昼間一生懸命働き、夕方になると子どもを保育園にお迎えに行って、バタバタと夕食の支度をする。

その間も、こどもは「おなかすいたよ〜」となる。

その時におやつをあげてしまうと、

「子どもが夕飯を食べられなくなるんじゃないか」

「夕食前にジャンキーなおやつをあげてしまう自分はだめな親だ」

そんなストレスを抱える親御さんが多いそうです。

でも、大野さんの作るクッキーであれば、添加物もなく、自然にもやさしく、食事の邪魔にもならない。

その分親の心にも余裕ができて、子どもも親も笑顔になる。そんな、「しんどくならないおやつ」を作っていきたいそうです。

 「みんな、毎日忙しい。だから、無理して頑張りすぎなくていいと思うんです。

代わりに、私たちが体に優しいおやつを作ります。

食べても罪悪感のない、こどもにも安心してあげられるおやつです。

そんなおやつを通して、少しでもみなさんに緩む時間を作れたら。」

 この言葉は、本当に多くの人を勇気づける、暖かい言葉だなと思いました。

 

大野さんの熱い想いをお聞きし、話が盛り上がり(いつの間にか他のスタッフが加わり、おつまみデリについて逆に相談するという構図に笑)、気づけばなんと、予定時間を大幅にこえました。

大野さん、お忙しい中お時間をいただき、本当にありがとうございました!

引き続き、よろしくお願いいたします。


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